降りやまない雪は、君の心に似てる。
粉雪と瞬く想い
***
――それは7年前。私が10歳だった頃の話。
「――小枝!おい、小枝ってば!」
夕焼けの空の下で、私を追いかけてくる影が近づく。ランドセルに付けられたダサいキーホルダーが揺れるたびにガチャガチャとうるさくて、私はムッとした顔で振り向いた。
「なに?」
「一緒に帰んないと、また先生に怒られるだろ。この前も菜々美ちゃんが変な男に追いかけられたって」
怒られるのは私のほうなんだし、べつに放っておいてくれていいのに。
「菜々美ちゃんって誰だっけ?」
「……はあ、本当に小枝は人の顔を覚えないよな」
「べつにいいでしょ!」
私はまた不機嫌になって、歩くスピードを速める。
それでも追いかけてくる足音は同じ場所で止まって、私のほうが早く着いたのに先に玄関を開けられてしまった。
「お母さん、ただいまー!」
元気のいい声が響いたあと、リビングからお母さんが顔を出して笑う。
「おかえり、〝大樹〟」
私も一緒に帰ってきたのに、と口を尖らせながら家に上がって、そのまま洗面所で手洗いうがいをする。
風邪予防のためじゃない。しないと怒られるから。なのに、大樹はしなくても怒られない。世の中色々と不公平だと思う。