降りやまない雪は、君の心に似てる。


私とお母さんと大樹は同じ部屋で寝ていて、いわゆる川の字というやつだ。

だけど大樹は寝相が悪くて、朝起きると、いつも大樹が真ん中でお母さんはその右隣。大樹の左隣にいる私はお母さんの顔さえも見えなくて、いつも向かい合って眠るふたりを見ながら寂しい気持ちになっていた。


同じ双子なのに、いつだって大樹が優先。

それでも唯一、大樹には真似できない私とお母さんだけの時間がある。それは……。


「小枝、こっちにおいで。髪の毛結んであげる」

学校に行く前にお母さんはいつも私の髪の毛を可愛く結んでくれる。


私はお母さんがいつもお化粧をしている鏡の前に座って、お母さんと同じヘアブラシで寝癖の髪を整えてもらう。優しい手つきで髪の毛を触ってもらうのが大好きで、ふわりとお母さんの匂いがした。


「ねえ、お母さん。私ね、この前の算数のテスト百点だったの」

この時間だけはお母さんを独り占めしているような気がして、私は足をバタバタさせながら上機嫌に言った。


「あら、本当?偉いわね」

「ふふふ」

鏡に映るお母さんはとても綺麗で、私の自慢だ。授業参観があるとクラスメイトの子たちが『小枝ちゃんのママは美人で羨ましい』と口を揃えて言うし、スラッとした細身の体型だから『昔はモデルだったの?』なんて言われるぐらい。

だから私も大人になったら、お母さんのようにいつも身なりをきちんとして、お洒落で綺麗な人になりたいって思っている。


「お母さんも計算は得意だったのよ」

「そうなの?」

「小枝のお父さんも理数系が得意な人だったしね」


お母さんはよく〝お父さん〟の話をする。

でもおばあちゃんはそれをひどく嫌がって、『お父さんなんて呼んじゃダメよ』としょっちゅう小言を言っている。

どうしてダメなのか、幼い私にはよく分からないけれど、私はおばあちゃんの前ではお父さんの話はしないって決めている。おばあちゃんのことも大好きだからだ。
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