降りやまない雪は、君の心に似てる。
「でもね、大樹はお父さん似なのよ」
ざわっと私の胸が騒ぐ。
「目鼻立ちも耳の形も、ああやって周りの雰囲気を明るくさせる性格も、全部がそっくり」
そう言うお母さんの顔は、とても嬉しそうだった。
きっと自分に似ている私より、自分が愛した人に似ている大樹のことが可愛くて仕方ないんだろう。だから大樹もお母さんから愛されている。
それは嫉妬って言葉じゃ足りないくらい私は大樹にたいしてモヤモヤとした感情をつねに抱いている。
「お、お母さん……」
なんとか気を引きたかった。それなのに、また大樹が邪魔をする。
「ねえ、お母さん。俺の三角定規知らない?」
ひょっこりと襖から顔を出した。
大樹は使ったら使いっぱなしの性格で、よく物をなくす。片づけも面倒くさがってやらないし、本当に私とは正反対。だから大樹を見ていると、私はイライラしてしまう。
「ふふ、はいはい。今探してあげるから待って」
お母さんはそう言って、大樹の元へと行ってしまった。肩に置かれていた手の感触はもう残っていない。
どうして私は大樹以上になれないのだろう。
私がお母さん似じゃなくて、お父さん似だったら良かった?
……そんなことをいくら考えてもどうにもならないけれど。