降りやまない雪は、君の心に似てる。


「ハア……ハア……ッ」

一生懸命走っても、男の人は追いかけてくる。
しかも歩き慣れていない道で、私は今自分がどこにいるのか分からない。

どこを曲がれば家に着くのか。そんなことを考えている内に、気持ち悪い息づかいがすぐ後ろで聞こえて、背中がゾクッとした。


どうしよう、どうしよう、どうしよう……!


「ねえ、お嬢ちゃん」

そんな低い声と一緒に肩を叩かれる。「いやあ……っ」と恐怖心で目を瞑った瞬間、「小枝!」と誰かに名前を呼ばれた。


その小さな身体は私を守るように男の人の背中を蹴飛ばしてキッと強い顔で睨みつける。


「なにするんだ!クソガキ!」

「うるせー!小枝に触るな!!」

それは大樹だった。


「大人をなめるなよ」

今にも襲いかかってきそうなほど男の人は怒っている。それでも大樹は私の傍から離れなくて、自分のランドセルに付いている防犯ブザーの紐を引っ張った。

ピリリリリ!!と大きな音が鳴り響いて、それを聞いた男の人は慌てた顔で去っていく。


私は緊張がとけたみたいにその場に座り込んでしまって、気づけば瞳から絶え間なく涙が流れていた。
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