降りやまない雪は、君の心に似てる。
それから暫く経って、今日もお母さんとおばあちゃんは喧嘩をしていた。
リビングで言い合う声を聞いていると大体内容は把握できる。私はこっそりとドアのガラス越しからふたりの様子を覗き見した。
どうやらお母さんが近所の人に結婚もしていないのに『うちの旦那さんは……』と話していたらしく、「恥ずかしいからやめなさい」とおばあちゃんに怒られていた。
「恥ずかしいってなに?あの子たちの父親でしょ。いつか結婚して家族になる約束をしてるんだから」
それでもお母さんは開き直った態度をしていて、おばあちゃんの顔がさらに険しくなる。
「いい加減、目を覚ましなさい!」
そしておばあちゃんの怒鳴り声が響いた。
「養育費も送ってこない、連絡もとれない男よ。そういう薄情で自分勝手な人間はいくつになっても変われないの。……尚子、あなたは捨てられたのよ。だから――」
「捨てられてない!」
お母さんがおばあちゃんのことを睨むような目で見た。
「今は忙しいだけなの!今頃はちゃんと仕事も見つけて、私たちと暮らす為のお金を貯めておいてくれてるはずなのよ!あの人のことなんてなにも知らないくせに、好き勝手なことばかり言わないで!」
お母さんがそう声を荒らげたあと、台所の勝手口が静かに開いた。そこにはおじいちゃんが立っていた。
「ふたりとも落ち着きなさい。あまり大きな声を出すと、またご近所に聞こえるよ」
おじいちゃんに宥(なだ)められたふたりは同じ色のため息をついて別々の部屋へと入っていった。