降りやまない雪は、君の心に似てる。
そして不穏な空気が漂う家の中で、私は玄関から靴を履いて家の裏庭へと向かった。
そこには綺麗に割られた薪が並べられてあって、おじいちゃんがまた薪割りの作業を再開していた。
トンットンッ!とリズムよくおじいちゃんが斧を振り下ろす。最近は『腰が痛い』と言っているけれど、おじいちゃんは薪割りの達人なんじゃないかって思うほど上手い。
「おじいちゃん」
私が声をかけると、おじいちゃんは首元に巻いたタオルで額の汗を拭いた。
「おー小枝か。どうした?」
おじいちゃんは白髪で、背も同年代の人たちと比べると高いほう。若い頃は相当モテたと本人から聞いたことがあるけれど、お酒が入っている時だったし、本当かどうかは定かではない。
「私も手伝いたい」
「はは、じゃあ、割った薪を一箇所に集めてくれ」
「うん」
おじいちゃんは優しい。おばあちゃんもお母さんとは喧嘩ばかりだけど、それを私たちに八つ当たりすることはない。
「大樹はどうした?」
「今日は友達の家に遊びにいった」
「小枝は行かないのか?」
「私は……大樹みたいに友達が多くないから」
私は言われたとおり薪を集めながら、おじいちゃんのことを見た。
新たな薪を丸太の台に乗せる作業が中腰でツラそうだった。だから薪を台の上に置くのも手伝うことにする。おじいちゃんは「ありがとう。助かるよ」と言って、また斧を振り下ろした。
本当は私が薪割りをできたらいいんだけど、前に一度だけ手伝った時に全然薪が割れなくて、結局おじいちゃんの足でまといにしかならなかった。
簡単そうに見える作業だけど、こうやって綺麗に割れるようになるまでには相当時間がかかるようだ。