降りやまない雪は、君の心に似てる。
またイライラとしてきて、車内にかかっている音楽の音量をいつもより大きくした。しんみりとしたバラードが好きなお母さんと大樹。でも私はアップテンポな曲が好き。
ジャンジャンッ!とスピーカーから音楽が流れてきて、私の足も自然とリズムに乗る。
「小枝。もう少し音を小さくして。運転中は気が散って――」
お母さんがそう言ったあと、ドンッ!!という衝撃音が響いた。
私の身体は右に大きく揺れて、そのまま窓ガラスに頭を強打した。
次にもう一回、身体が前のめりになるほどの衝撃がして、なにが起きたか分からないまま目を開けると、目の前には倒れた電柱があった。
前のフロントガラスは粉々になっていて、ボンネットからは煙りが出ている。
運転席を見るとエアバックに埋もれたお母さんがいて、どこかをぶつけたのか唸り声を出しながら苦しそうにしていた。
「お、お母さんっ! 大丈――」
言葉を言い終える前に、ドクンと心臓が嫌な音をだす。
後ろに目を向けると、大樹の姿がどこにもなくて、目に映ってるのは知らない車の先頭部分だけ。
しかも後部座席は原形がないぐらいグチャグチャで、大樹がいた場所のドアがなかった。
さらに、突っ込んできた車の運転手が割れたガラスから血を流しているのも見えた。意識はないようだ。
だ、大樹はどこ……?
私も足が挟まって動けない。それでも懸命に大樹を探すと、追突してきた車体の下からわずかに足らしきものが見えた。
履いていた靴は、大樹のものだった。