降りやまない雪は、君の心に似てる。
それから二週間が過ぎて本格的な冬がきた。おじいちゃんが割った薪をストーブの中へと入れて、リビングで暖をとる。
だけど暖かいはずなのに家の中の空気は凍えそうなほど冷たくて、今日もお母さんとおばあちゃんは言い合いをしていた。
「どうして勝手に捨てたりしたの!?」
どうやらおばあちゃんが大樹の物をなにか処分してしまったらしい。
「勝手にじゃないわ。ちゃんと確認したでしょう?」
「そんなの聞いてないから」
「なに言ってるの。返事もしたじゃない」
「いい加減なことを言わないで!」
この頃のお母さんは精神的にも肉体的にも限界がきていて、つねにイライラとした状態が続いていた。
おばあちゃんが調べてきた病院にも結局行くことはなかったし、お母さんの言動を見て近所の人たちがますます笑い者にしていることは知っていた。
このままじゃダメだ。いつかお母さんが壊れてしまう。
そんなふうに心配していると、ついにおばあちゃんが決定的な言葉を放った。
「じゃあ、この家を出ていきなさい。このまま甘えた生活をしていたら尚子はいつまで経っても前に進めない。自立して、ちゃんと仕事も見つけて、それで自分の力で生活しなさい」
いつかはこんな日がくると思っていた。
お母さんは大学を卒業してすぐに私たちを授かって、そのまま生活のなにもかもをおばあちゃんに頼っていた。
ひとり娘で箱入り娘。だからお母さんの弱さには少なからず甘えが存在している。
それでもおばあちゃんはお母さんを切り捨てることなく面倒をみてきた。
きっと今のままじゃダメだと思っていたのは私だけじゃない。先のことを考えて、おばあちゃんはあえてお母さんを突き放す選択をしたのだ。