降りやまない雪は、君の心に似てる。
「……分かったわよ」
お母さんの返事はシンプルだった。
おばあちゃんに対して意地を張っているようにも見えたけれど、自分のことを理解してくれないおばあちゃんから離れたい気持ちもどこかにあったのかもしれない。
その日からどんどん話は進んでいって、私たちは春から東京で暮らすことが決まった。
もちろん急な話で戸惑ったけれど、私も近所の人の好奇の目にはうんざりしていたし、なにより大樹の事故のことを無条件で思い出してしまうこの町から離れれば、なにかが変わるかもしれないと思った。
「……小枝」
荷造りをしているときにおばあちゃんが部屋へと入ってきた。持っていくものは最小限で、とお母さんに言われていて、私の荷物はリュックひとつぶんだけ。
おばあちゃんは何故かとても申し訳なさそうな顔をしていて、私の手を握りながらなにも悪くないのに「ごめんね」と謝る。
きっとお母さんを突き放したことで、また私を巻き込んでしまったと考えているのかもしれない。
私も私なりに色々と悩んだ。でも、今の状態のお母さんをひとりで東京に行かせることはできない。
「大丈夫だよ」
私はおばあちゃんの手を握り返した。
なにが大丈夫なのか、自分でも分からない。これは完全な強がりだと思う。だって東京に行くことに不安しかない。
でも、俚斗が言ってくれたように今は逃げてもいいときなんじゃないか。もしかしたらその先にまた家族全員で笑える未来があるんじゃないかと、そんな淡い期待をしていた。