降りやまない雪は、君の心に似てる。
お母さんはおばあちゃんに言われたとおり仕事も見つけて、日中と夜と二種類を掛け持ちしていた。
昼間はスーパーのレジ打ち。夜は駅前の雑居ビルの中にあるスナック。
家計はもちろん苦しかったと思うし、ただでさえ東京は物価が高いから生活はギリギリだった。
でもきっとお母さんは、生活のためというより、私には気を紛らわすために働いているように見えた。とくに夜の仕事はそう。
お酒を飲んで綺麗な格好で接客することに息抜きのようなものを覚えて、帰ってくる朝方にはほろ酔い気分で眠りにつく。
大樹の事故のことを忘れたいのか、それとも美瑛で過ごしたことを塗り潰してしまいたいのか。
そんなお母さんの心の内側は分からないけれど、たまにある休日でも、私を避けるように出掛けていくお母さんを見るたびに、消化することのできない気持ちだけが募っていく。
同じ家にいても顔を合わせない。
最後に交わした言葉がなんだったのか思い出せないほど、私たちはすれ違っていた。