降りやまない雪は、君の心に似てる。
そして私は今日も青い池へと行った。いつもより遅い時間になってしまったけれど、俚斗はきっと、あの場所で待っている。
観光客に紛れて遊歩道を歩く。私はやはり彼の背中に、磁石のように引き寄せられてしまう。
あの頃より比べ物にならないほど大きくなった俚斗は、私が名前を呼ぶ前に振り向いた。
「小枝」
声も幼い時と違って、とても低いものになった。だけどその優しさだけは変わらない。
多分、私は世界で一番、俚斗に名前を呼ばれる瞬間が好きかもしれない。
「寒くなかった?」
「全然。あの体育館よりは寒くないよ」
「あー、小枝が俺の洋服を無理やり脱がそうとした時ね!」
俚斗が大声で言うから、近くにいた人の視線がこちらに集中する。
「ちょ、ちょっと。誤解されるようなこと言わないで!」
俚斗はクスクスと笑っていた。お互いの過去を包み隠さずに話して、今の私たちの間に隠し事はない。
相変わらず青い池は凍っていて、柔らかい淡雪が音もなくその上に落ちていく。
以前、俚斗と一緒に作った雪だるまは手すりの下にちゃんと残っていて、誰かに壊されていなくて安心した。
「でも、まさか大樹が小枝だったなんてね」
俚斗が池を眺めながらぽつりと言った。
「小枝はさ、俺があの頃のようにここに通い続けてて呆れたでしょ」
「呆れないよ」
だって、俚斗はこの場所にいると落ち着くと言っていた。きっと唯一、息が吸える場所だったのだろう。
「……ただ、ビックリした」
「ビックリ?」
俚斗が首を傾げている。私は少し言いづらそうに小さな声で呟いた。
「俚斗があまりに綺麗な男の子に成長してたから」