降りやまない雪は、君の心に似てる。
「俺さ、ずっと大樹のことが忘れられなかったんだよね」
「え……?」
「あ、変な意味じゃないよ? なんていうかさ……」
珍しく俚斗が口を濁すから、私は気になって言葉の続きを待つ。
「あの頃の俺は、奇病が原因で誰とも遊べないこととか、周りの子たちと違うこととか、なにをしても孤独を感じてた。そんな時に、この青い池で大樹……ううん、小枝に会って久しぶりに友達と楽しい時間を過ごして、ずっとそれを心の支えにしてたんだ」
グッと胸になにかが込み上げてきた。
記憶の奥底へと隠してしまった俚斗と過ごしたあの頃の時間。今は思い出せてよかったって思う。
彼との出来事だけは、なにひとつ忘れてはいけない。この色褪せることなく残っている傷跡がそう言っている気がした。
「あと手の傷……、ごめんね。付けたことすら全然気づいてなかった」
「ううん、平気」
きみにもらった傷ならば痛くない。
青い池に穏やかな時間が流れる。
私は俚斗の隣にいると不思議と呼吸がしやすい。
そんな中、私のポケットのスマホが振動した。画面に表示された名前を見て、せっかく落ち着いていた気持ちがザワザワと掻き乱れる。
「電話、出なくていいの?」
俚斗がスマホを指さす。画面には【着信 お母さん】の文字。