降りやまない雪は、君の心に似てる。
暫くすると、クリーム色の建物が見えてきた。
二階建ての焦げ茶色の屋根は横に長くて、入口には子どもたちが手を繋いでいるイラストが書かれている。
ここは、俚斗が住んでいる児童養護施設。
私が頭の中で描いていた施設のイメージとは違って、とても明るくて綺麗で、庭のような場所には可愛らしい遊具も置かれていた。
勢いでここまで来たけれど、目の前には【関係者以外立ち入り禁止】と書かれた門があって、つい足が止まる。
たしかにここには色んな事情を抱えた子たちが沢山いるし、知らない人への恐怖心が残ってる子もいるだろうから、部外者である私が簡単には入れないよね……。
「なに怖気づいてんだよ」
すると、寺本がそう言って私の背中を乱暴に押した。
「わ、私が入ってもいいの?」
「バレなきゃいい話だろ」
寺本はキョロキョロと周りを見渡しながら「こっち」とどんどん進んでいく。
施設は男女別の部屋に分かれていて、食堂や共同スペースに、子どもたちが雨の日でも遊べる広い空間など、親がいなくても快適に暮らせるような設備が備わっていた。
きっと寺本はこっそり施設を抜け出した経験があるんだろう。
職員たちの動きやよく通るルートを熟知していて、バレるどころか一度も誰とも会わずに廊下を進むことができてしまった。
「ここ」
寺本が足を止めたのは、廊下の突き当たりにある部屋の前。
「あ、ありがとう……」
「ここまで巻き込んだ借りはいつか返してもらうからな」
ぶっきらぼうにため息をついて、寺本はべつの部屋へと入っていく。