降りやまない雪は、君の心に似てる。
私はコクリと頷いたあと、部屋のドアノブをゆっくりと回した。
部屋の中には二段ベッドが左右に置かれていて、どうやらここは四人部屋のようだ。
でも他の人が利用している形跡はない。
もしかしたら俚斗の事情を知る職員の人たちが、他の仲間たちとは別々の部屋にするように配慮しているのかもしれない。
部屋には俚斗のものらしき私物がぽつりぽつりと置いてあるだけ。
生活感などはほとんど感じられずに、空気もとてもひんやりとしていた。その冷たさが俚斗からの影響なのかはわからない。
あまり足音を立てずに床を歩くと、右側のベッドの下に人影が見えた。
一応、確認するように近づくと、そこには苦しそうな顔をして目を瞑る俚斗がいた。
「俚斗」
腰を屈めて声をかけると、ゆっくりとその瞼が開いて、視線だけがスローモーションのように私へと向く。
「……小枝、なんで」
俚斗のか細い声が耳に響いた。
目は虚ろで、焦点もあまり合っていない。
枕元には薬の空きビンが隠すようにいくつも置かれていて、これをひっそりとひとりで飲んで耐えていたんだと思うと胸が張り裂けそうだ。
「ごめん。俺……青い池に行けなくて……」
そう言って起き上がろうとする俚斗を私は慌てて、「そのままでいいから」と言葉で止めた。