降りやまない雪は、君の心に似てる。
ねえ、俚斗。
私ね、高校を卒業したらこっちに戻ってこようと思ってるんだ。
東京がイヤだからじゃないよ。
お母さんと話し合って、おばあちゃんもいい歳だし、いつまで元気でいられるか分からないからって。
だからおじいちゃんやご先祖さまが守ってくれたあの家を、今度は私たちで守っていこうと決めたの。
そう決意した途端に東京もなんだか名残惜しくなってきちゃったけど、卒業するまでの間にもっと学校生活を楽しんで、離れていても繋がっていられる友達をたくさん作りたいと思ってる。
それが、今の私の一番の目標だよ。
少しは成長したでしょ?
私はちゃんと前を向いてる?
俚斗に心配されないように強くなれてる?
だけど、そんな私を俚斗にも見せたかったから今日ここに来たのに、寂しさが少しだけ増えちゃった。
もし叶うなら、もう一度きみに名前を呼んでほしい。
叶うなら、もう一度だけ……。
『小枝』
頬を通りすぎていく風に乗って聞こえてきた声。
慌てて振り向いても、そこには誰もいない。
……バカだな、私。しっかりしなくちゃ。
自分を叱咤した時、私は青い池の手すりの下に〝あるもの〟を見つけた。
その瞬間、ドクンと胸が高鳴って、私は地面に膝をつける。
そこにあったのは、ふたつの雪だるま。
形は歪で半分溶けかかっているけれど、間違いなく私と俚斗が作ったものだった。
「まだ残ってたんだ……」
寄り添いながら並ぶ姿に胸がギュッとした。