降りやまない雪は、君の心に似てる。
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「昨日、寝づらくなかった?」
雪かきが一段落して、おばあちゃんがリビングで温かいお茶をいれてくれた。急須(きゅうす)に茶葉を入れただけなのにおばあちゃんのお茶の濃さが絶妙で身体に沁みる。
「布団、一応布団乾燥機にかけたんだけど、やっぱり太陽には勝てないからね」
おばあちゃんはそう言ってお茶菓子も私の前に出してくれた。
雪国は冬になると布団を干せない期間が続く。ただでさえ湿気が多いのにひどい時には床に水が溜まるほどで、加湿器じゃなくて除湿機を使わないと間に合わないぐらいジメジメとしてる。
「大丈夫。ちゃんと眠れたよ」
これは嘘じゃない。
おばあちゃんが用意してくれた部屋は昔私が使っていた場所だった。といっても私のひとり部屋ではなかったけど、畳や本棚。ふざけて穴を開けた障子もそのままだったから驚いた。
「……荷物。お母さんのけっこう残ってたんだね」
まだ冷めないお茶をすすりながら私は言う。
タンスの中にはお母さんの洋服が当時のままで残っていて、毎日使っていた化粧台もそのままだった。
そういえば大人の真似事がしたくて内緒で口紅をつけたこともあったな。すぐにバレて怒られたけど、この狭い部屋だって子どもの頃は十分すぎるぐらいの遊び場だった。