降りやまない雪は、君の心に似てる。
そしてまた道北バスに乗って20分。電光掲示板に【白金青い池入り口】と表示されると私はすぐに降車ボタンを押した。
青い池に着くと昨日は全然いなかった観光客の姿があった。自撮り棒を持って撮影してる人やインスタ映えを狙ってなんとか池の綺麗さを撮ろうとしてる人。
そんな観光客の熱量とは真逆に池は今日も凍っているから、その青さはあまり目立たない。
「なんか残念な感じだねー」「思ってたのと違った」なんて落胆する人が隣を通りすぎて、その道の先にはまたまっすぐに私を見つめる瞳。
「また会えたね」
俚斗がニコリと笑った。
私は笑い返すこともせずに足を止める。やっぱり近づいてきたのは俚斗のほう。
その足音は他の人と比べるとすごく静かで、一ミリ浮いてるんじゃないかってぐらい。それでも雪道の上にくっきりと靴の跡が付いてたから、私の耳が寒さで遠くなってるだけかもしれない。
「今日は貸し切りじゃないね」
俚斗が声を出すたびに白い息が空気中に溶ける。
「みんな池が凍っててガッカリしてるけど、氷点下なら凍るのは当たり前だよね。夏みたいに真っ青な池が見れると思ったのかな」
「………」
そんなことを私に言われても困るけど、東京は雪なんて滅多に降らないし気温も氷点下にはならないから水が凍るなんてこともない。
だからきっとネットや本で調べて、綺麗な青い池の画像を見てそのままのイメージで来てしまったのなら、気持ちも分からなくはないけど……。
すると俚斗は何故か私の顔をじっと見つめて、その視線が寒さよりも痛い。
「どうして喋ってくれないの?俺のこと忘れちゃった?」
まるで捨てられた子犬のような顔。