降りやまない雪は、君の心に似てる。
「ねえ、知ってる?雪は昔、不香の花って呼ばれてたんだよ」
「ふきょうの……はな?」
「そう。香りのない花っていう意味」
そんなことを言う俚斗がすごく綺麗で、その透明の肌と雪が重なって1枚の絵にして切り取っておきたいぐらい。
「空から急に白いものが降ってきたら花びらって思うのも当然だよね」
やっぱり俚斗はなにを考えてるか分からないけど、この空気感はキライじゃない。
寒いのに身体の中が熱を帯びていく感じ。今日はカイロを持っていないから、この暖かさがなんなのか自分でも説明できない。
そして俚斗はまた私の知らない歌を口ずさむ。
伏せたまつ毛に雪の雫(しずく)が乗っていて、男のくせにまつ毛が長いなんて反則だ。
「溢れそう」
「え?」
頬に流れそうになっていた雫を指先でちょんと弾こうとした時、バッ!!と勢いよく避けられて私のほうが固まってしまった。
隣にいたはずの俚斗が私と離れた距離にいて、時間が止まったみたいにお互い言葉を探す。
「えっと……」
その空気に耐えられずに負けてしまったのは私だった。