降りやまない雪は、君の心に似てる。


***


そして正午過ぎ。私はまたキャラメル色のダッフルコートを着て外に出た。

おばあちゃんは松村さんの家に行ってから帰ってこない。きっと時間を忘れて長話でもしてるんだろう。


外では久しぶりに太陽が顔を出していて今朝の冷え込みが嘘のように天気がよかった。一面真っ白の世界に光が反射して、目が開いていられないほど眩しい。

それでも気温は-5℃で、冷たい空気が鼻をかすめるたびに寒かった。


美瑛駅前の停留所に着く頃にはシャーベット状になった雪道でブーツの底がべちゃべちゃになっていた。雪が降ってくれたほうが歩きやすいと道民が口を揃えて言う理由が分かった気がする。


そのあと時間どおりバスが来て私は乗車券を取った。

時間がいつもより早いせいか後ろの座席は埋まっていて、私は仕方なく入り口に近い場所に腰を下ろした。


「今日は晴れてるね」

青い池に到着すると俚斗がいつもの場所にいた。


昨日あれだけ服装のことをああだこうだ言っていたのにお互いにやっぱり同じ格好だから少し可笑しい。

今日も池には観光客がたくさん来ていて、池の水は相変わらず凍っているけど、それでも晴れた空と周りの風景を写真に撮ったら昨日よりはインスタ映えするものが撮れると思う。


「天気が悪かったの小枝のせいじゃなかったね」

俚斗が生意気な顔で言う。


「そんなこと言ったっけ」

「えー記憶力には自信があるって自慢気に言ってたじゃん」

それはちょっと語弊があるんじゃないかな。記憶力は悪くないとは言ったけど自信があるとも自慢気にも言った覚えはない。

私をからかっているのか、それとも怒らせたいのか。なににせよ私はまた不機嫌に仏頂面。


「ありがとね。もうここには来てくれないと思ってた」

……なんだ。ただの照れ隠しか。
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