降りやまない雪は、君の心に似てる。


そんなことを考えながら眠ったせいで、久しぶりにイヤな夢を見た。

あの写真のようなキラキラとした笑顔じゃなくて、怒ったように私をじっと見つめる瞳。


『なあ、どうして小枝が――』

そして、いつもその言葉の続きを言わずに私は眠りから覚める。冷たいと思ったら右目から涙が流れていて、大きなため息とともに私は涙を拭う。

あの日から繰り返し見る夢は変わらない。


……どうして私が?

そんなの言われなくても私が何万回って思い続けてきた言葉だよ。


日が昇って朝が来ると、私の心みたいに止まない雪が降っていた。しかも水道管が凍るほどの寒さで顔が洗えない。

鏡の前で悩んでいると洗面所におばあちゃんがやってきた。


「小枝おはよう。今日は一段としばれるわね」

寒さに慣れているおばあちゃんでも両手を擦って、すでに厚手のセーターと靴下を履いている。


「うん。おはよ。水が出ないんだけど、どうすればいいの?」

「あらあら。ちょっと待っててね」

おばあちゃんはそう言ってなにかを取りに行った。

水道管が凍結するなんて東京じゃありえないよね。しかも冷えこむ夜にはテレビのテロップで【凍結注意】って流れるくらいだし、雪国は本当に特殊だ。

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