降りやまない雪は、君の心に似てる。


食べ物を口に入れたら少しだけ身体が暖かくなった気がした。ゴクンと最後のおにぎりをお茶と一緒に流し込んで、その間俚斗はまた上機嫌に鼻歌を口ずさんでいる。

その横顔は鼻筋がスッと高くて、喉仏や骨格は全然私のものとは違う。

色が白くてまつ毛が長くて、きっとこんなに綺麗な男の子とはこの先出逢えないと思えてしまうぐらい。


「ねえ、俚斗はさ。今まで楽しかった思い出ってある?」

なんとなく、聞いてみたくなった。

こんなに清んだ空気を持っていて、こんなに優しい人が寂しい思い出ばかりじゃイヤだなって。


「うーん。そうだなあ……」

それは長い沈黙だった。その頭の中で駆け巡っている記憶を私は覗くことができない。だからただ、待つだけ。


「昔ね、友達がひとりだけいたんだ」

またはらはらと山から流れてきた雲に乗って雪が降り始める。俚斗の瞳はビー玉みたいにまん丸で、すぐに私は反らせなくなる。


「俺が奇病になってからの初めての友達」

俚斗の顔が嬉しそうにゆるんだ。


「……どんな人?」

「すごく活発な男の子。当時は俺も小学生で小さかったんだけど、よくこの池で会ってた。色んな話をしたり、あと迷いネコを一緒に探したりした。本当に楽しかったなあ……」

俚斗が懐かしそうに遠い目をしていた。だけどすぐに表情を変えて、切なそうに眉毛を下げる。


「でも引っ越しちゃった。それからは一度もその友達には会ってない」

「……また会いたい?」

「うーん。でも結局病気のことも最後まで言えなかったし、今会っても知られなくないって気持ちのほうが強いかな。綺麗な思い出は綺麗なままがいいしね」
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