降りやまない雪は、君の心に似てる。
細雪と芽吹く絆
***
そして次の日も私の1日は雪かきからはじまった。初日はすぐに腰が痛くなったり、足がクタクタになってしまったけど最近は慣れてきたおかげで手際も良くなってきた。
「おばあちゃん、これ一回なげてくる?」
「うん。お願い」
雪を乗せた小さなリアカーを押しながら、自然と方言を使っていたことに気づく。ちなみに〝なげる〟とは捨てるという意味。
そういえばこれも東京では通じなかったなあ……。
こうして美瑛にいれば私は北海道民に見えるだろうか。もうすぐ12月が終わる。年が明けて冬休みが終わったら私はどうすればいいのかな。
東京には帰りたくない、絶対に。
「おはよう。その雪、公園になげにいくの?」
ある家の前を通った時、そこで雪かきをしていた女性に声をかけられた。
公園に行くにはこの道を通らなきゃいけないし、毎日往復してるから知り合いではないけれど顔は見たことがある。
私は静かに頷くと「大変だから、うちのボイラー使っていいわよ」と地面を指さした。
そこには四角形の穴が開いていてゴーッという音とともに白い湯気がたっている。
これは融雪機(ゆうせつき)といって槽の中に投入した雪を熱で急速に溶かすことをができる機械。
雪かきをした雪は指定されている公園や空き地に捨てにいくのが一般的だけど、こうして家に融雪機がある人はそこに雪を投げ込むだけ。
雪かきの往復って大変だし、その苦労が見に染みて分かったからおばあちゃんの家にも付けてあげたい。
「いえ、私は……」
「もう、遠慮しないで」
そう言ってリアカーに乗せられていた雪を融雪機になげるとあっという間に雪は跡形もなくなくなった。