降りやまない雪は、君の心に似てる。


「最近見かけるけど、どこの娘さん?」

内心、きたと思いながらも雪を捨ててくれた手前シカトするわけにもいかない。


「……洸野です」

聞こえなければいいなってぐらいの小声で言った。


「洸野さん?もしかしてお孫さんの小枝ちゃん!?」

どうやら私は相当ここら辺では有名らしい。女性の顔をよく見るとなんとなく昔の面影が重なって、この人よくうちに回覧板を届けにきていた人だ。

たしか町内のイベントごとがあると率先して幹事や役員を引き受ける人で面倒見がいいけれど、そうやって色々な人と接点を持って情報収集するのが大好きな人だった。


もしかしたら今だって私のことを知っていて、あえて知らないふりをして引き止めたのかもしれない。

……迂闊だった。


「もしかして尚子さんも一緒に帰ってきてるの?」

案の定待ってましたと言わんばかりの顔で、早く情報を得たくて身体は前のめり。


「ずいぶん前に出て行ったきりで一度も顔を見てないけど元気なの?家にいるならご挨拶……」

「いえ、母はいません」

早く話を終わらせたくて食いぎみに否定した。
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