降りやまない雪は、君の心に似てる。



私にもあんな風に背丈がちょうど一緒だった弟がいた。大樹と私は二卵生の双子だった。

私とは真逆に素直で甘え上手で元気な男の子。こんな雪の日は犬よりも喜んで庭を駆け回っていたっけ。

そんな大樹は今はどこにもいない。


考えれば考えるほど闇に落ちていく感覚。

胸が詰まって頭が鉛のように重くなって、私は〝あの日々〟を思い出すことをやめてしまう。


大樹はどんな声をしてたっけ?

お母さんとすれ違いはじめたのはいつだっけ?

どうして近所の人は私のことを笑っていたの?

寂しくて苦しくてなにもかもがイヤになったとき私が向かった場所は……。

おぼろげで途切れ途切れの記憶たちは、まるで鍵がかけられたかようになにも語らない。

それを深く探ろうとするほど、まるでテレビの砂嵐のようになにも見えなくなる。

「はあ……」と私は心を落ち着かせるように白い息を空へとはいた。


そして私は美瑛駅に着いていつもの停留所で足を止めた。

風邪が悪化しないようにマフラーを口元まで上げながら時刻表を確認すると、一本前のバスはわずか3分前に発車したばかり。

しかも次が来るまで1時間以上待たなくてはいけなくて、最悪すぎて言葉がでない。


一旦家に帰るべきか、それともこのまま待つべきか。

はやる気持ちばかりが先走って落ち着かないでいると「あれ?」と誰かから声をかけられた。
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