降りやまない雪は、君の心に似てる。
「やっぱり混んでるわね」
「おばあちゃん、私の腕に掴まっていいよ」
「ふふ、ありがとう」
私も人混みは嫌いだけど、東京の通勤ラッシュなんていつもこんな感じだから慣れていると言えば慣れている。
参拝するために列に並ぶと、前のカップルたちの声が聞こえてきた。
「ねえ、ここって隠れハートがいっぱいあるんだって!」
「隠れハート?」
「うん。あそことか」
彼女はそう言って社殿を指さす。そこには金色の装飾があって、それがハートの形になっていた。
実はこの神社は、北海道三大パワースポットとしても有名で、超縁結びの神様がいるとか、いないとか。
……縁結び、ね。正直、そういうのは信じない主義だけど、こういうのは願うことに意味があるような気もしている。
せっかく神社に来たんだし、いつも仏頂面な私が切実に頼めば神様も聞き届けてくれるんじゃないかって、参拝の順番待ちの間に考えていた。
「ねえ、おばあちゃん。初詣ってさ、良い一年になれますようにとか、健康祈願とか、そういう感じじゃないとダメなのかな?」
叶わなかったら嫌だから、一応確認。
「あら、そんなことないわよ。自分が叶えたい望みをお願いすればいいのよ」
そう言われてホッとする。
気づけばどんどん列は進んで、ついに私たちの番になった。お賽銭を入れて、銀色の鐘をおばあちゃんと一回ずつ鳴らす。そして二礼二拍手一礼をして私は目を瞑った。
今の私の中にある一番強い願い。
それは、過去の出来事から解放されることでも、お母さんとのわだかまりをなくすことじゃない。
一番の願いは、〝俚斗が幸せでいられますように〟。
あとから、奇病を治してくださいとか、もっと具体的なことを言えばよかったと後悔したけれど、神様は何個も叶えてくれないだろうし、私はやっぱり神様なんて信じられない人間だから。
でも、だれよりも優しい俚斗にたいしての願いならって、そんな淡い期待をこめずにはいられなかった。