降りやまない雪は、君の心に似てる。
それから家に帰って、おばあちゃんはすぐに薪ストーブに火をつけた。冷えた身体を暖めるように私はその側へと近づく。
「今日の晩ごはんなにがいいか決めておいてね。昨日使おうとしてたお肉は冷凍したからいいんだけど、そばだけは早めに食べないとね。年越しそばじゃなくなっちゃったけど」
私が風邪をひいたから、昨日は随分と寂しい大晦日になってしまったと思う。
冬休みも残り少ないし、おばあちゃんにはまだたくさん恩返しがしたい。でもその前に……。
「ねえ、おばあちゃん、ごめん。ひとつだけワガママ言ってもいい?」
おばあちゃんに言葉の続きを言ったあと、私は再び出掛けることにした。
美瑛駅からバスに乗って20分。新年早々、青い池を見ようと思うのはカップルくらいしかいなくて、こっちが恥ずかしくなるほどイチャイチャした人たちとすれ違いながら私は足を止める。
視線の先には、黒いミリタリーコートをはおった一際目立つ大きな背中。
今日の私は健康体で体温も平熱だというのに、また胸の辺りが熱くなったのを感じた。
……これじゃ、風邪のせいにできないじゃない。
私が先に名前を呼ぼうとしたのに、気配に気づいたのか俚斗がゆっくりと振り返った。
「……小枝!」
周りの人が二度見するぐらいの声。
「そんなに大きな声を出さないで」
また可愛げがないことを言ってしまった。
「はは、ごめん。明けましておめでとう」
「……うん」
一日振りに会う俚斗は、もちろんなにも変わってない。それなのに私は、まだ目を合わせられずにいる。