あたしはモデル。【完】
「やっときたか、桜ちゃん!
渋滞してタクシーが動かなかったんだって?
まぁ、改めて拓夢くん、桜ちゃん、CM撮影無事に終了おめでとー!!!」
かんぱーい、とグラスのぶつかる音が響く。
渋滞っていうのはおそらく、ヒロトがついた嘘だろう。
上手く言っといてくれたんだ。
後でまた、お礼言っとこう。
楽しそうに盛り上がっているみんなを見て、少し笑みが溢れた。
撮影、大変だったしなあ…
そんなことをぼんやり考えていると、足音が近付いてくるのがわかった。
顔をあげると、拓夢の姿。
すらっとした高い身長に、やはりいつ見ても綺麗な整った顔に、甘い笑みを浮かべていた。
この笑みは、知ってる。
拓夢がいつも、“峰山 桜”に向ける笑み。
そして、今日
ほんの一瞬だけだけど“山本 桜”に向けてくれた笑み。