あたしはモデル。【完】
目の前には、確かにお兄ちゃんがいた。今より少しだけ幼い私に向かって、優しく微笑んでいた。
「お兄ちゃん!!!」
近寄って、触れようとする。
でも、触れられない。
声も、伝わらない。
『いってきまーす!』
笑顔で言う昔の私。
だめ…
行っちゃだめ!!
でも、伝えられない。
そうそれは、忘れもしない中学3年生の冬。
――フラッシュバックする光景
親を事故で失った私達は、お兄ちゃんの収入で生活していた。
15歳の私と21歳のお兄ちゃん。
お兄ちゃんの職業は、モデルだった。
本人はあまり家で仕事の話をしないためよくわからなかったが、友達曰く、ものすごく人気のあるモデルだったらしい。
そんなお兄ちゃんのおかげで、私達の生活は何不自由なかった。
お兄ちゃんが大好きだった。
幸せな、家族だった。