この胸のときめきは?
ドキドキの診察室
名前を呼ばれて診察室へ入ると、まだ30にもなっていなさそうな若いDrが、パソコンの画面を見つめていた。
「どうしましたか?」
Drはそう聞きながら、やっとこちらを向いた。
寝癖のついたボサッとした髪型に、疲れた顔をしていた。
昨夜は当直でもしていたのかな?
でも、中々のイケメン。
涼しい目元に、スッと伸びたスマートな鼻。形のいい唇から歯並びの良い白い歯がみえた。
ネームプレートには内田と書かれていた。
「あ、あの、昨日から鼻水が出て、喉も痛くて、」
「じゃあ、口を開けて」
ステンレスのヘラで舌を押さえて覗かれる。
「わぁ、赤いなぁ。これは痛いでしょ」
首に下げていた聴診器を耳にかけた。
「ちょっとまくってくれるかな?」
躊躇しながらブラウスをお腹のあたりまでそろそろとまくる。
そばにいたナースが介助して、思いっきりブラウスをまくり上げた。
細い身体のわりに発達しすぎた胸が恥ずかしい。
真剣なまなざしで聴診器を胸に当てている。
「なんか、やけに速いな。緊張してる?」
内田Drが薄笑いを浮かべて、わたしを見つめた。
「え? そんな、緊張なんてしてません!」
落ち着いたふうを装って、キッパリと否定した。
「そう? じゃあ、いつもこんな感じ? 息苦しくない?」
心配げな顔で内田Drが聞いた。
「あ、いえ、そうですね、時々苦しくなります」
私、いったい何を言ってるんだろ。
「そうかぁ、ちょっと心配だから一応、心電図も撮ろうか。あと採血もして」
ナースにそう指示をして、パソコンのマウスを操作する。
なんかすごくバカなこと言ってしまった。
外来処置室で採血されたあと、心電図を撮って来るよう言われる。
余計なことを言ったせいで、若い男性の検査技師に心電図を撮られた。
恥ずかしすぎるでしょ!
心電図を撮り終え、また内科外来の前で待つ。
たくさん待っていた患者の数もかなり少なくなっていた。
名前を呼ばれ、診察室へ。
イケメンDrにまた会えて嬉しい・・・。
「特に問題はないみたいですね」
心電図を見ながら内田Drが不思議そうな顔をした。
嘘をついてたのがバレたかな? と心配になり少しうろたえた。
「そ、そうですか? 時々ですけど、とっても苦しくなるんです。本当になんでもありませんか?」
またまたウソばっかり。
風邪で来ているのか、心臓病で来ているのかがわからなくなる。
Drの手が私の顔にふれ、眼球をみたり、脈を調べたりし始めた。
首にもふれて、少しくすぐったい。
「動悸したり、疲れやすかったりする? 最近痩せたとか?」
「最近少し痩せました。とても疲れます」
「そうか、バセドウ病かも知れないな? 若い女性に多い病気なんだけど。血液の検査の結果が出てみないとなんとも言えないから、来週また来てくれないかな。今日は風邪薬と抗生剤と熱冷ましのお薬をだしておきます」
「は、はい、お願いします」
「はい、お大事に~!」
ナースから、さっさと出て行くようにうながされた気がして、診察室を後にした。
来週か、長いな。ナースはいいなぁ、毎日会えて。