この胸のときめきは?
紹介状なんていらない!
「大学病院で一度、精密検査を受けた方がいいかもしれないな。紹介状を書くから近いうちに診てもらって」
そう言ってDrは引き出しから、便箋のようなものを取り出した。
ええーっ!!
「そんなの、そんなの困ります!」
あまりの展開につい大きな声で叫んでしまった。
ベンを持った内田Drが驚いて顔をあげた。
「どうして? 自分の身体でしょ? ちゃんと調べないとわからないだろう」
怒ったような顔で詰問され、どうしていいのかわからなくなる。
「だって・・・だって、先生じゃないと、先生じゃないと治せませんから!」
顔が真っ赤に火照ってしまって、恥ずかしいのと、みじめな気持ちで泣きそうになる。
そばにいた中年のナースがぷっと吹き出して、クスクス笑った。
内田Drも決まりの悪い顔で手紙を書き始めた。
こんなことって・・・あんまりだ。
だけど、これが現実なんだ。
少しでいいから、もう少しだけでいいから夢を見ていたかっただけなのに。
「じゃあ、手紙書いたから」
ぶっきらぼうにボソッと口にしたその言葉がとても冷たく感じられた。
欲しくもない紹介状を無理やり渡され、仕方なく診察室を後にする。
会計で精算を済ませ、悲しい気持ちでアパートへ帰った。
はじめから無理とわかっていたのだから。
大学病院など受診するわけもないので、宛名のない紹介状を開いてみた。
舞衣さんへ
あなたは僕の大切な患者さんですから、必ず主治医である僕が治します。
今夜、会えるかな。
○○時に○○○で待っています。
胸の痛みを早く治せるといいけれど。
携帯 ○○○××××○○○○
内田