いつものコンビニで
1円玉がご縁になる恋もある
「764円になります。おにぎり温めますか?」
「あ、いえ、そのままでいいです」
いつもならPASMOで支払うのだけれど、小銭入れが1円玉と10円玉で膨らんでいたので、現金で支払うことにした。
後ろに3人ほど買い物客が並んでいる。
なんとなく店員も早くしてくれよと言いたげに見えて、ちょっと慌ててしまう。
昨日かわいらしくネイルした長い爪のせいで、小銭がうまく掴めない。
「チャリーン!」
1円玉を落っことしてしまった。
どこへ行ってしまったのだろう。
たかが1円を探し回りたくはない。
でもその一円がないと4円には足りない。
もういいやと思い、3円を引っ込め、10円を足して支払おうとしていると、後ろからスーツを着た男性の手が伸びた。
「はい、これ」
彼は落とした1円玉をわざわざ屈んで拾ってくれたのだった。
「す、すみません。ありがとうございます」
恐縮しながら頭を下げた。
「1円を笑うものは1円に泣くですよね」
爽やかな笑顔でそう言った彼は、イケメンといえるかどうかは微妙だけれど、あっさりとした好みの顔立ちだった。
精算を終え、出口に向かって歩いていた私はすでに恋におちていた。
一目惚れって、本当にあるんだ。