いつものコンビニで
はじめてのストーカー
アパートへ戻ってからも、彼のことが忘れられなかった。
小銭を拾ってくれただけの人と、どうやって知り合ったらいいのだろう。
肉食系女子なら ”付き合ってください,, って素直に言えるんだろうな。
彼は明日もコンビニへ寄るだろうか?
翌日も仕事帰り、同じコンビニへ、同じ時刻に寄ってみた。
やはり彼の姿は見られずガッカリする。
雑誌を立ち読みして、少しだけ待ってみることにした。
でも30分が過ぎても彼は現れなかった。
だんだんと諦めの気分になり、サンドイッチとアイスを買って店を出ようとしたところ、自動ドアが開いて、彼が入って来た。
「あ、」
驚いて見上げた私などに気づきもせず、彼は奥の飲み物コーナーの方へ行ってしまった。
名前だけでも聞けないだろうか? なんとか少しでも進展させたい。
結局、買い物を終えた彼を待ち伏せして、後をつけた。
コンビニから徒歩3分ほどでたどり着いたアパートへ彼は入って行った。
翌日もいつものコンビニで待ち伏せをして、彼の後をつけた。
少しは気づいて欲しいという気持ちが高じたせいで、近づきすぎてしまったらしい。
「なに? なんか用?」
突然立ち止まり、振り向いた彼に怪訝な顔でにらまれた。
「あ、あの、え、えっと、その、、ご、ごめんなさい」
しどろもどろになって、うなだれる。
どうしよう……怒らせてしまったみたい。
「昨日もつけてただろう。ストーカーかよ!」
恐い顔でなじられて、身がすくむ。
気づかれてたなんて……。
気味の悪い女だって思われていたんだ。
あまりに悲しくて思わず泣きそうになる。
「ごめんなさい。もうやめます。本当にごめんなさい!」
ぺこりと頭を下げ、惨めな気持ちで来た道を戻る。
「待てよ、この間、コンビニで小銭を落とした子だろう?」
覚えていてくれたんだ。
少し優しい口調で話しかけられたら、溢れかけていた涙がポロリとこぼれた。
「泣くなよ。別に怒ってるわけじゃないんだ。俺、女の子にストーカーされるなんて初めてだから」
ちょっと照れたように彼は笑った。
「明日、また会わないか? いつものコンビニで」