月が見ている
月が見ている
月明かりが薄暗い部屋を照らしている。
彼の安らかな吐息を感じながら、私は窓の外に浮かぶ、月を眺めていた。
青白い光に包まれた静寂――。
「眠れないの?」
耳もとで囁いて、彼が私を抱き寄せる。 私は答える代わりに、その腕の中で寝返ると、甘えるように胸元に頬を埋めた。
彼の鼓動に包まれて、深く安らかな眠りに落ちていく――。
薄暗い部屋に差し込む光。
時計の音だけが響いている。
午前3時――。
夢から醒めた。
私の隣には、誰もいない。
(なんだ、夢か……)
ひとりきりのベッドの中、胎児のようにちいさく体をまるめて、毛布に包まる。
幸せな夢から醒めたあとの、深い暗闇……。
ふいに零(こぼ)れたしずくが枕を濡らす。
声を潜めて、私は泣いた。
窓から差し込む、柔らかな青白い光。
夜の静寂――。
月が優しく見ている。