約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)

「さっ、お祖父さん、瑠花さん。
 
 二人は敬里のお迎えを……。
 私は敬里の部屋を掃除しておきますよ」


そう言ってお祖母さんは私たちを玄関から送り出した。
家の外には、何時の間にか手配されていたタクシーが横付けされていた。



後部座席のドアが自動で開けられた車に、
促されるままに乗り込むと、静かにドアは閉められて車は通いなれた病院へと移動していく。


病院に到着するといつものように受付を済ませて、
総司がいる場所へと看護師さんに案内された。



「おぉ、敬里。
 顔色もよぉーなって、元気そうじゃな」


お祖父さんが声をかけた総司は、
何時も見慣れた着物姿ではなくて、何時の間にか支度されていた洋服だった。


肩ほどまで伸びていた髪はショートレイヤーへと変化し、
ロング丈のカットソーに、さらりと羽織られたジャケット。

そして足元に合わせているのはチノパン。


私はあまりの不意打ちに言葉が思うように出なくて、
部屋の入り口で立ち尽くしてしまった。



「さて、敬里。わしは会計に行ってくるよ。
 瑠花さん、暫く頼んだよ」


お祖父さんがそう言って部屋を出て行ったのと同時に、
総司が「瑠花、どうかな?」っと照れ臭そうに言葉を紡いだ。


「……似合ってる。
 って言うか、びっくりした。

 今日、総司のお洋服探しに行かなきゃって、
 昨日、お年玉貯金してたから銀行でおろしてきたの。

 でも……こんなにかっこいい姿見せられたら、
 このまま総司を独り占めしたくなっちゃった」


そう言って総司に抱き着くと、総司もゆっくりと私に触れてくれた。


「こうやって瑠花を抱きしめるのも、久しぶりな気がするよ。
 でも……こうして、もう一度瑠花に触れることが出来る。

 本当にこの場所に来られて良かった。

 敬里君だった?
 僕の代わりに幕末に飛び立ってしまった、山波の従兄弟には悪いとは思ってる」


「そんな罪悪感、総司が持たなくていい。
 私が勝手に総司を連れてきてしまったんだもの。

 敬里のことはちゃんと考える」

「そうだね。
 何が出来るかはわからないけど、僕たち二人で向き合っていく問題だね」

「うん。
 総司がこれから飛び出す世界は、本当に何もかもが新しいものだらけでびっくりするよ」

「お金一つにしても違いすぎて、戸惑うばかりだったよ」っと、

総司は財布の中から、小銭入れや紙幣を見せた。
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