約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)


「瑠花さん、部屋のものを一通り敬里に説明して、
 鏡の前に連れてきていただけますか?」


お祖母さまの言葉にゆっくりと頷いた。



総司と共に、部屋に支度されたものを一つ一つ確認していく。


机の中には筆記具を始めとする勉強道具が整頓して並び、
クローゼットには洋服たちがズラリと並んでいる。

クローゼットの隣の箪笥の中には胴着が丁寧に片付けられて、
竹刀と木刀が用意されていた。



総司は、ゆっくりと木刀に手を伸ばして構える。
久しぶりに見た総司の姿に、出逢って間がなかった頃の総司を思いだす。
 


「花桜の家は道場もあるから、気になったら道場で練習させて貰ったらいんじゃない?

 だけどその前に、鏡の前に行かないと。
 お二人が待っていると思うから」


そう言うと、総司はゆっくりと木刀を元の場所に戻して部屋を出た。


「山波はここでずっと暮らしていたの?」

「うん。ここは花桜が生まれ育った家だもの。
 花桜の部屋はね、この部屋」


そう言って、総司に支度された部屋の左隣の部屋を指す。


ちゃんと帰ってくるんだよ。
花桜、この部屋に……。



そんな思いを込めて、ドアにゆっくりと触れた。



総司を連れて、お二人が待つ鏡の元へと辿り着くと、
二人は私たちをゆっくりと鏡の前へと座らせた。



「さて、敬里。

 敬里として我が家でこれから暮らしてもらうわけじゃが、
 わしも、ばあさんもこの鏡で一部始終を見届けて参った故、
 語らずとも真実を知っておる。

 まずは、この現実を知る者のみが集まったこの場で、
 お前さんに伝えておこうと思う」



鏡の前でお祖父さまのその言葉から今日までの一部始終が、
総司へと語られた。





そう……、この世界に戻ってきてからの僅かな間でも、
見ているだけで辛くなる映像を、この二人はずっとずっと見守り続けてきた。



あの幕末で出会った山南さんから今も繋がり続けるこの時間。



そして最後に、お祖父さんがゆっくりと白木の箱を取り出して総司へと差し出す。



「お前さんが敬里としてこの世界に来た時、
 腰にさしておったものじゃ。

 幕末と違って今は刀を持つにも許可が必要じゃて、
 わしが今日まで預かっておった。

 剣は武士の魂であろう。
 これはお前さんに返しておこう。

 わしらの孫たちが、幕末へと旅立っていったのも、ご先祖様からの縁があってのことだろうと、
 受け入れておる。

 それ故に、わしらは、お前さんを敬里として接する。
 戸惑うことばかりじゃと思うが頼るがよい」


お二人は、そう言って総司に話しかけた。





総司は鏡の隣にある大きな仏壇の方へと視線を向ける。



「ここに山南さんも……」


小さく呟くと翻弄される自身の運命を受け入れるように、
静かに仏壇に向かって手を合わせた。
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