約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)


「ほらっ、先生に、めちゃくちゃ苦ーい良薬貰ってきてあげるから、
 それまでちゃんと寝てなさい。

 じゃないと何時までたっても、風邪が治んないよ。
 風邪が治らなかったら、次の戦、置いてくんだからね」


そう言って、アイツの部屋を出ようとした私の元へ、
アイツは追いかけてきて、私に肩に手をかける。


「待てって、次の戦ってなんだよ。

 もう白河の戦いが始まるっていうのか?
 会津に来てそんなに過ぎるのか?」


敬里も現代の人間で、歴史と言う知識で会津戊辰戦争を知っている。


「白河の前の戦いだよ」

「白河の前の戊辰って言ったら宇都宮か?」  

「うん」

「けど……ここの奴らは、行かないんじゃないのか?」


そういった敬里に、私は首を横に振る。



「決まったよ。出陣。

 斎藤さん、慶喜公の弟である松平喜徳さま。
 会津藩主に会津新選組として部隊を与えられることになったの。

 負傷している兵士たちは、引き続き天寧寺で逗留して治療だけど、
 動けるものは、会津藩が手配してくれた藩兵たちを新たな隊士に迎えて、
 出陣が決まったの。

 宇都宮の動きも、今の会津にとっては大切だもの。
 それに噂では、宇都宮周辺で、土方さんの姿を見かけたって人もいるみたいでさ」

「お前も行くのか?」

「うん。
 行くよ……。後悔したくないから。

 だけどさ、もう刀の時代じゃないじゃん?
 だから私も西洋銃、教えてもらわなきゃいけないかなーって思ったの。

 銃の引き金を引けばいいって、理屈ではわかってても、どれほどに強い衝撃が伝わってくるかなんて
 わかんないもの。

 だけど……戦に行くんだったら、いざとなったら、相手の命を奪うことも視野に入れておかないといけない。
 とっさの判断で、引き金が引ける強さと引き金を引くまでの知識が必要だと思うの。

 引き金を引くまでの情報を知ってるか知らないかで、その先の未来は変わってくる。
 だから……」

「ホント、お前は昔から強いよ。
 強すぎて……見てられねぇんだよ」



そう言って敬里は言葉を吐き出すと、私は両手で体を抱き留められてしまう。



「えっ?何?敬里」

「あっ、悪いっ……。
 薬はいらねぇよ。

 俺も行くところがあるから、お前も早く斎藤のところへ行けよ」


そう言って敬里は逃げ出すように部屋から立ち去って行った。



その翌日から出陣の日まで、
私は生まれて初めて会津藩兵たちと共に、銃の訓練を始めた。


私の隣には、ちゃっかりと敬里の姿もいる。

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