約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「うへぇー。
舞、なんであんなこと知ってるんだよ」
「えっ?
それは、そうやって私に教えてくれた人が居るから。
敬里よりは、かなり修羅場経験してると思うからさ。
それより先を急ごう」
その後も私たちは順調に、京を目指して何日も何日も歩き続ける。
途中、休憩を挟みながらその場所にたどり着いたのは、
出発から19日過ぎた頃だった。
見慣れた景色は、あの鳥羽伏見の戦いで荒らされて、
今も復興のための準備が進められている。
そんな印象だった。
倒壊した建物、焼き払われた町。
まだそんな傷跡が残る場所。
私は近藤さんがいるとされる、三条河原へと足を進ませた。
敬里はキョロキョロとしながら、
私の後をついてくる。
「なぁ、舞。
ここは?」
「歴史で知ってるでしょ。
京の都よ。
花桜と瑠花が、長ぐ過ごし続けた場所。
私が、二人と再会した場所ね。
今から行くのが、三条河原。
敬里は少し黙っててね」
立ち止まって、後ろを振り向き敬里に言い聞かせる。
コクンと首を縦にふったのを見届けて、
私はゆっくりと深呼吸をして、その手を帯へと触れた。
この先に近藤さんがいるはずなんだ。
斎藤さんの代わりに、ちゃんと任務を果たさなきゃ。
だけど……私、どうやって近藤さんを助けたらいいんだろう。
確か三条河原にさらされているのは近藤さんの首なわけで。
どれだけこの時間に長くいるとはいえ、
首をどうやって持ち去ればいいんだろう。
今更に、そんな疑問と恐怖が沸き上がる。
そんな葛藤を抱きながら、私は呼吸を整えて三条河原へと近づいた。
鴨川沿いを歩いて、たどり着いたその場所。
近藤さんがいるはずの場所に、それは存在しなかった。
ホッとした安堵と同時に、力が抜けてその場へと座り込んでしまう。
「おいっ、どおした?
舞?何、座り込んでんだ?」
突然座り込んだ私を気遣うように、
敬里は私の正面に座り込む。
「舞?」
敬里に肩に両手をかけられて軽く揺すられて、
私は現実を取り戻す。
近藤さんの首がなかったからって、ホッとしてる場合じゃない。
それじゃ、任務失敗。
斎藤さんの誇りは守れないじゃない。
何してるの、私。
「ごっ、ごめん。敬里。
大丈夫。もう大丈夫だから……」
「おいっ、お前。
こんなところで何をしている?」
三条河原で敬里と私のやりとりを目撃された人が、
私たちとの傍へと近づいてくる。