約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
次に目を覚ました時、私は懐かしい場所にいた。
知らないはずなのに、懐かしい場所。
そして私を覗き込む優しい夫婦の眼差し。
「気がつかれましたか?
お嬢さん」
「おいっ、舞。
大丈夫か?
お前いきなり、ぶっ倒れて心配したんだぞ。
舞を抱きかかえて病院探してる時にさ、
親切なこちらの夫婦に助けて貰ったんだよ。
少し熱、出てたみたいだぜ。
無茶ばっかりしやがって」
そういって、口早く私を気遣う敬里の声が耳を刺激した。
「あらあらっ。
坊ちゃんも心配だったのかも知れませんが、
そんなに矢継ぎ早に攻め立てては、可愛そうですよ。
病み上がりなのですから。
さぁ、少し白湯を飲んでくださいな。
後、こちらは主人が薬草を煎じたものです。
よく効きますから、今はゆっくりと体を休めてくださいね」
そう言うと、助けてくれた夫人は炊事場の方向へと消えていった。
布団から体を起こそうと板間に手を突くと、
敬里が体を起こすのを手伝ってくれた。
「ごめん。
心配かけちゃったね。
あぁ、花桜に叱られちゃうねー。
敬里に、こんなことさせちゃってさぁー」
わざとらしく声をかける私。
敬里も、本当だったら……私が巻き込まなきゃ、
こっちで幕末の苦労を味わうことなんてなかったはずなのに。
打ち明けたくても、打ち明けられない秘め事。
だけど……何時かは打ち明けたい秘め事。
目の前の難問から意識をそらすように、
煎じてくださった薬草を白湯にといて覚悟を決めて飲み干す。
そして何故か懐かしさを感じて笑みがこぼれた。
やっぱり……あの日と変わった歴史だけど、
全てが変わったわけじゃない。
舞ちゃんの記憶を持つ私が疲労で倒れてしまっても、
舞ちゃんに縁がある人が、ちゃんとこうやって助けてくれてる。
そして今、ご主人が煎じてくれたこの薬も……、
あの頃の舞ちゃんがずっと飲んでいた、懐かしい薬。
だけど……時間は、
あの時と変わり始めてるんだ。
今の私のお腹に、斎藤さんとの子供がいるわけないし……、
そういった行為もしていないのだから、生まれようがない。
……私、ちゃんと舞ちゃんの心を一つずつ、満たしてあげられてるのかな?……。
「なぁ、舞。
聞いちゃいけないのかも知れないけどあえてきく。
お前さ、夢の中でずっと魘されながら『敬里、ゴメン』って謝り続けてたんだけどさ、
俺、お前に謝られるようなこと、思い当たらないんだけど」
突然の敬里の言葉に絶句する。
無意識のうちに、罪悪感で、魘されながら声にしてた?