約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
112アイツが終(つい)える日 -花桜-
天寧寺での三か月に渡る療養を終えた土方さんと共に、
福良へ移動した私は、負傷兵たちの手当の手伝いを続けた。
出血したした血は肌に薄黒くこびりつき、
刀での傷ではなく銃弾を掠めた傷跡は、
体中のあちこちを傷つけ、時に風穴をあけて、
動けずにうずくまる者、息をするだけでもやっとの状態で体を潜めるように縮ませる者、
様々だった。
私は桶に水を汲んで、支度されている手当て用の晒を手にして、
負傷兵たちの傷口の洗いを心を鬼にして行っていく。
傷口を洗い終えた頃には、ぐったりとしてしまう負傷兵もいるけど、
時折、『有難う』と言葉を紡いでくれる人たちもいる。
何も出来ないただの女子高生だった私が、
ほんの少しでも、今、ここで誰かの役に立ててるかもしれない。
そう感じられる瞬間が、今は本当に嬉しい。
負傷者の手当ほかの役割と言えば、
井上さんが京に居た時からきっちりと教えてくれた炊事、
そして宿陣地の掃除とか、何か出来ることを見つけてはこなしながら過ごしてた。
そんな中、新選組にも出陣の命が下る。
土方さんも、隊士たちと一緒に母成峠へと行こうとしたものの、
斎藤さんが土方さんの状態を見て、今回も隊長は斎藤さんがつとめると告げた。
『副長は、援軍が必要になったときに応援して欲しい』と。
自分たちが戻れる場所を守って欲しいと。
斎藤さんのそんな想いをくみ取って、今回の母成峠への出陣を土方さんは諦めた。
出陣前夜、舞と敬里は斎藤さんと共についていく道を選んだと聞いた。
お互い、どうか無事で。
そんな望みを抱えながら、挑んだ戦。