約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
そして悪い予感が脳裏によぎる。
舞が生きているのに、生きることを手放したように気落ちして見えたこと。
私が声をかけているのに、視点が定まっていない現実。
慌ててアイツの姿を探すように私は陣地内を探しまわる。
そして私は見つけた……。
舞が傍にいる、莚(むしろ)をかけられた存在を……。
「舞?舞?どうしたの?」
その場に座り込む舞の肩を掴んで、
揺さぶるように声をかける。
私が何度、ゆすっても舞は反応しない。
ただ……何処か、一点だけを見つめているようで。
私は地面に寝転んでいる莚を片っ端から取っ払うように、
手に取っていく。
そんな私の態度に『何をしている』っと慌てて窘めに来る隊士たち。
そして人が集まりだした頃、
沢山の戦死した亡骸の中にアイツの姿を見つけた。
「……えっ……嘘……」
体の力が抜けていく感覚と共に、
その場へと座り込んでしまう私。
「……敬里……」
名前を呟いたものの、まだ現実味なんて何処にもなくて、
私は慌てて体を引きづるようにアイツの方へと辿り着くと、
横たわったままのアイツの肩に手をかけて、ゆっさゆっさとゆする。
だけどアイツの目は開くことはなくて……。
視界が次から次へとにじんでぼやけていく。
どうして?
なんで?
命の取り合いだってわかってたはずなのに、
現実を受け止めていたはずなのに、
今のこの現実が受け止めきれないでいる。
「バカっ!!
何寝てんのよ、ちゃんと目を開けなさいよ。
開けて、また私の前でバカやりなさいよ。
敬里……。
おじいちゃんとおばあちゃんを泣かせるなんて、
悲しませるなんて私許さないんだから……」
悲しみなのか怒りなのかわからない感情が、
私を包み込んで、どうしようもなく苛立たせる。
行き場のない怒りも悲しみも、
バカにしかぶつける先が見つけられなくて……。
「山波っ!!」
そんな暴れ続ける私を斎藤さんの声が制した。
「山波、やめろ。
少し、頭を冷やせ」
そのまま冷水を浴びせられた私は、
その場に立ち尽くすように、動けなくなった。
体が震えてコントロールが効かない。
ねぇ・・・・・・、
どうしたらいいの?
震えていく体を両手でぎゅっと抱きしめるように、
私は敬里の亡骸にを真っすぐに見据えながら、
唇をかみしめた。