約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)


そのまま硬直した私と舞が再び意識を自覚した時、
それは新政府軍の大砲による砲撃が届いた瞬間だった。


砲撃の衝撃で慌てて目を覚ますと、
私と舞は、何処かの部屋で休まされていた。



「山波、加賀、動けるか。
この場所も危ない。

 十六橋が突破されたとの連絡がきた。
 土方さんは、滝沢本陣へと向かう。

 俺たちは滝沢の地で副長と合流する」


斎藤さんの言葉に私たちは再び、
動き出すしかなかった。 


時間は止まっちゃくれない。



アイツが終(つい)えた時、
私たちは改めて、この戦の惨さを思い知った。



この場所を離れる時、
もう一度……一瞬だけアイツと向き合いたくてその場所へと向かう。


確か、この場所。



土気色をしたアイツの顔を脳裏に焼き付ける。

少し冷静になって見つめたアイツの顔は、
どこか満足そうに見えた。



……バイバイ……






小さく、アイツに声をかけて、
私は吹っ切るように戦場へと戻った。




その後、私たちは山の中を三時間ちょいの道程を、
動ける負傷兵たちを連れて滝沢本陣の地まで向かうことになる。



そこでもう一度、
土方さんと合流することができた。





秋の肌寒さが、冬の厳しさを運んでくる。


それは更なる、
この戦の厳しさを物語っているようで……、
私はこれまでに何度も何度も引き締めてきたはずの身を、
改めて引き締めようと、自分自身に自己暗示をかけるように言い聞かせた。



今は、何も考えず……生きることだけを考えよう。


生きて、私の世界へ無事に帰ることを、
私自身の為すべきことをやり遂げて……。


< 179 / 246 >

この作品をシェア

pagetop