約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)


「敬里」
「敬里や」


鏡は今も容赦なく残酷な映像を映し出し続ける。


敬里が銃に撃たれたことに対して、
発狂したように崩れ落ちる舞の体。

そんな舞と敬里の異変に気が付いて、
敵部隊と交戦していたその手を止めて、
二人の元へと駆け寄ってくる斎藤さん。


撃たれそうになる舞を庇うように、
茂みの中へと飛び込んで、
隊士たちへと攻撃の合図を手で送る。

味方の何度かの応戦の後、
タイミングを探って茂みから外に飛び出した斎藤さんは、
敬里の体を支えて再び茂みへと逃げ延びる。


負傷した敬里を同行させたまま、
斎藤さんは気力がなくなったように映る舞もつれながら、
何とか味方の陣へと逃げのびようと足掻いているようだった。


そんな無情な映像を映し続ける鏡。


その場に居合わせた皆が言葉を失った瞬間だった。

花桜のお祖父様とお祖母様は、鏡の前を離れて
何処かの部屋へと移動してしまう。

そして私の傍で、鏡を見つめ続けていた総司もまた、
その映像から逃げ出すように、道場の方へと離れていった。



私はどうすることも出来ず、
起こってしまった現実から逃げ出すことがないようにするべく、
じっと鏡が映し出す映像を睨むように凝視し続けていた。


鏡の告げる映像は、今も銃弾が飛び交う山の中を、
敬里をつれて一行が必死に、逃げおおせる経路を探し求めながら彷徨うように
歩き続けている。

息を潜めるように移動するものの、何度も遭遇しそうになる新政府軍。
時に、刀や銃で戦いながら、
命からがらに逃げ続けるそんな姿が映し出されていた。


ふと携帯電話が震えてパパからの着信を告げる。

携帯電話の待ち受け画面に映る時計を見て、
4時間も経過していることを知る。



「もしもし……」

「瑠花」

「パパ、連絡を忘れてしまってごめんなさい。
 でも私、今日はこの場所から離れられない。

 パパ……どうしよう……。
 総司と入れ替わりで幕末に行った敬里が銃で撃たれたの。

 多分……お腹のあたりが撃たれたように感じたんだけど……、
 体が崩れ落ちちゃった……。

 花桜のお祖父さまも、お祖母さまもショックだったみたいで、
 どこかの部屋に移動してしまって……。

 パパ……私、何も出来ないの。
 どうしたらいいの……」



心のどこかで、
私たちが殺されるはずがないって思ってたから……。

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