約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
この場所で花桜の帰りと舞の帰りを、
総司と花桜が思い続ける山崎さんと待ち続けるために。
だから……お願い。
まだ私の体よ、悲鳴なんてあげないで。
ちゃんとやるべきことを、
成し遂げたいから。
鴨ちゃん…、
私を遠くから見守って。
貴方が想いをやり遂げたように、
私もその『強さ』を持ってして背負い続けたいと
思っているから。
仮初の総司にただ憧れ続けるだけで、
何も現実と向き合うことが出来ていなかった私に、
鴨ちゃんは、現実を受け入れる強さを私に教えてくれた。
鴨ちゃんが居なくなった後も、
残された世界で私が悲しくないように、
総司ともつながる接点を残してくれてた。
ずっと気が付くことすら出来なかったけど、
こうなった今だからこそ、そんな風に
鴨ちゃんの存在を感じることが出来るようになった。
鴨ちゃんの死は、無駄じゃなかった。
長い時間が過ぎて、ようやくそんな風に感じられるようになった。
だから今は、その『強さ』で前に進み続けたいって、
そう思うのに……どうして体が言うこと聞かなくなるんだろう。
心がそれを受け止めるのを拒否するんだろう。
ちゃんと私は自分の足で、この場所で立ち上がっていたいのに。
……鴨ちゃん……。
★
「瑠花……瑠花……」
誰かの声が聞こえる……。
優しく懐かしいその声に誘われるように、
私はゆっくりと目を開ける。
眩しい光と共に降り注ぐの声。
「起きたか……。
なんて顔してやがる」
大きな手が私の頭を撫でてくる。
「……鴨ちゃん……どうして」
「声が聞こえたからな。
お前が呼んだら無視なんて出来ないだろう」
「鴨ちゃん……」
「ここが瑠花の住む月なんだな。
無事に帰れて、この場所で
一人で頑張って来たんだな」
優しい言葉が羽のように降り注いで、
私は瞳から温かい涙が零れ落ちるのを感じていた。
「鴨ちゃん……私に強さをちょうだい。
今よりも、もっと強くなりたい。
守られる側じゃなくて、
大切な人を守れる強さを」
そう……揺るぐことのない
強さが欲しい。
「瑠花は十分強い。
あの頃のお前よりは、
見違えるほどでっかくなってるよ。
もう十分に沖田を守ってやがるだろ。
この先は、瑠花が一人で抱え続けるものじゃない。
儂もこの場で瑠花を見守ってる。
信じろ。
瑠花自身の強さを」
鴨ちゃんのそんな声に包まれながら、
私は、ゆっくりと体の力が抜けていくのを感じていた。
★