約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「ママ……」
「まぁ、瑠花ちゃん。
いくら疲れてしまってるからって、制服で寝ちゃだめよ。
ほらっ、しわしわになってる」
「えっと……あの……、長い間ごめんなさい。
居なくなって……」
ずっと私、家族に心配かけて悪い子だった。
長い間、幕末に居ましたって言っても誰が信じてくれるだろう?
「あらっ、瑠花ちゃん。
おかしな夢でも見ていたの?
瑠花ちゃんはずっと家に居ましたよ。
えぇ、居ましたとも」
そう言うと心配そうに、額にママの手が伸びてくる。
「熱はないわね……。
朝ご飯の用意は出来てるわよ。
ほらっ、下に降りていらっしゃい。
体調が悪いならパパに連絡しておくからパパの病院に行くのよ」
そう言ってママは先に私の部屋を出て、一階へと降りて行った。
改めて部屋の壁をぐるりと見渡す。
カレンダーは、あの全国大会のあった八月のまま。
あっ、テレビ……。
慌ててリモコンを探してテレビをつけて同時に、相棒のノートパソコンを立ち上げた。
パソコンに映し出された日付を見て私は唖然とする。
その日付が映し出しているのは、あの私たちが幕末に旅立った全国大会の翌日でしかないのだから。
へなへなと腰が抜けていくのを感じて、私は絨毯の上に座り込んだ。
はははっ、まだ一日しかたってないんだ。
私、パパとママに心配かけてなかったんだ。
おかしなこと言っちゃったなぁー。
そう思う気持ちと同時に湧き上がってくるのは、
私が経験したあの時間は、嘘偽りない現実だったと言うこと。
あの心の痛みは体験しないと刻まれない。
鴨ちゃんとの時間も、総司との時間も……嘘なんかじゃない。