約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
だけど……向こうには威力の強い大砲が姿を見せた。
酒樽に土を入れて作った陣地も、米俵を幾つにも重ねて作った陣地も、
弾を防ぐのに何の意味もなさないほどに強力な威力を持つ大砲。
ドンっと一発、また一発と打ち込まれるたびに遅れて、ドカンっと火薬が爆発していく。
そして吹き飛ばされて負傷するもの、体に風穴があくもの……被害は一気に増え続けて形勢逆転。
「山波っ!!」
ふいに腕を引っ張られたと共に、抱きすくめられるように地面へと叩きつけられる。
「副長」
「土方さん」
隊士たちが次々に集まってきて声をかける。
「俺は大丈夫だ。
お前らも、死ぬなよ」
立ち上がった土方さんに引き寄せられるように立ち上がった私は、
今、爆発した場所へと視線を向けた。
「副長、前線より動きがあります。
徳川本陣の指揮官は、淀城へと入場して新政府軍を迎え撃つつもりのようですが……」
何処からともなく姿を見せた山崎さんは、その後の言葉を濁した。
「どうした山崎?」
「淀城は戦に備えはしているものの、少し趣が違う様に感じるのです。
もしかしたら、我々は城への侵入が許されないこともあるかと……」
山崎さんの言葉に土方さんは顔をしかめた。
「老中、稲葉正邦の裏切り?」
何処からともなく姿を見せた、斎藤さんや、原田さんたちが姿を見せる。
「しかし、まだ裏切りが決定的になったわけじゃないだろう。
だが山崎君の偵察が本当であるなら、我々も動き方を考えなければいけないな」
「そうだな。
永倉、お前ならどうする?」
「大坂城。
ここを乗り切って、大坂城まで辿り着くことが出来ればどうだろう?」
「大坂城か?
それには俺も賛成だ。
あそこは鉄壁の城。海には海軍。陸には鉄壁の城。盾も鉾も揃えば勝算は見えるだろうな」
「あぁ、大坂だ。
大坂へと何とか辿り着けば……」
そんな中、徳川から予測していた淀藩が入城を拒んだ旨の知らせが、激しい憤りと共にもたらされた。
「バカみたい……今も昔も、いい加減にしてっ」
舞は私の隣で、吐き出すように呟いた。