約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
やがて井上さんの体は板に乗せて寺へと運ばれ、
そのまま何処かへと連れられて行った。
寺の一角に掘られた穴へと埋葬される井上さん。
そんな井上さんを見送る花桜たち。
私も鏡越しに、静かに手を合わせる。
山波家に伝わる鏡を見つめながら、私は今も止まらない涙を必死に手のひらで拭い続ける。
「瑠花さんや……」
「すいません……。
井上さんの笑顔が消えてなくて……ずっと優しく見守ってくださる方だったんです。
何度もお料理をして……」
「えぇ、えぇ。
私も存じていますよ。
井上 源三郎さまと言う方がどれだけ新選組を支え、瑠花さんたちの力になってくださったか……。
花桜にもとても優しく雑務を教えてくださっていたわね。
あの子は包丁の使い方がとても下手くそで、教えるのも大変だったと思うわ」
そう言いながら、お祖母さまは再び鏡へと視線を向けた。
鏡の中では、今も涙を流し続ける花桜を山崎さんが抱きすくめていた。
ふいに、山波家に鳴り響く電話。
暫くして、お祖父さまが私の方へと近づいてきた。
「ばあさんや、花桜を頼む。
病院から呼び出しじゃ」
「まぁ、じいさん、こんな時間にですか……」
「あぁ。
敬里のところへ行ってくる」
「えぇ、行ってあげてください。
花桜は強い子です。
沖影も力を与えてくれるでしょう」
「瑠花さんはどうしますか?
もう日が落ちますが……」
「行きます。
母には電話をいれるので、今日は山波家に泊まってることにしてください」
そう言うと、慌てて携帯を取り出して母へと電話をかける。
「もしもし」
「あっ、今日、花桜の家に泊まらせてもらってもいいかな。
共通の友達が、遊びに来てるんだ。
久しぶりに会って嬉しくて」
「瑠花ちゃん?」
「花桜の家族も泊まっていいよって言ってくれてるから」
「まぁ、本当に大丈夫なの?
ご迷惑でしょ」
そう言って押し切られそうになっていた私に、お祖父さまが電話へと手を伸ばす。