約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「ただいま。パパ、ママ」
リビングの扉を開いて、二人の姿を確認するとお辞儀をして挨拶をする。
「お帰りなさい、瑠花ちゃん。
パパと待っていたのよ。
早くご飯にしましょう」
ママの声を聴いて私は二階の自室へと駆けあがって、肩にかけていた鞄を机の上に置いた。
私の部屋に本棚には、大好きな幕末の時代を綴った物語が沢山ある。
新選組を主人公に描かれた物語も、永倉さんが語り伝えたとされてる文庫本も並べられてる。
私はそんな本たちの背表紙にそっと指先を触れたまま「花桜、舞、どうかご無事で」と静かに目を閉じて祈りを捧げた。
「瑠花ちゃん、はやく降りてらっしゃい」
階下から催促するママの声に「はーい」と返事をして、私は慌てて一階のリビングへと顔を出すと、
パパはダイニングのテーブルへと移動していた。
「瑠花、今日も花桜ちゃんのところに行ってたのかい?」
「そう」
「花桜ちゃんのところだと安心だけど、瑠花ちゃん夏休みの宿題は終わってるの?」
「終わってるよ。夏休みが始まる前に終わらせたから安心してママ。
それより今日、パパ帰ってこれたんだね。
お仕事、忙しいんじゃなかったの?」
「あぁ、瑠花に聞きたかったことがあったんだよ。
一週間くらい前に、ママから瑠花が具合が悪そうだと連絡があった。
だけど瑠花はパパのところには来なかったね。
瑠花が元気なんだったらいいよ。
だがパパのお友達が、病院内で瑠花の姿を見たって聞いてね。
瑠花の傍には、年輩の男性が一緒だったと」
「まぁ、それは本当なの?瑠花ちゃん」
パパの言葉にママも手を止めて、私の方に視線が集まる。
「今、パパの病院に敬里が入院してるの。
一緒に居たのは、花桜と敬里のお祖父ちゃんだから、怪しい人じゃないよ」
敬里の名前は、私の両親も昔から知ってる。
本当は敬里じゃなくて、そこに居るのは総司だけど……、
そんな夢物語、誰にも信じてもらえない。
「病院には敬里君のお見舞いに?」
「そう。
だから私が具合が悪いわけでもないし、怪しい人と一緒に出掛けてるわけでもないから安心して。
でもばれちゃったら隠さなくてもいいよね。
堂々とパパを頼れるかな。
敬里、結核が見つかって入院してるの。
パパ、結核ってなおるんだよね。
昔は死病だった。だけど今は、なおるんだよね」
真っすぐに見据えて問いかける。