約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
えっ?
一人目……二人目……っと続いていく板に、
固まって動けないでいた体を必死に、動かそうと念じる。
「丞っ!!」
最後の一枚が海へと落とされようとした時、
私はその場所へと走りだして、板を掴み取ろうと手を伸ばすものの、
後僅か及ばず、板はそのまま海へと滑り落ちてしまった。
その最中、突如、雷鳴が轟く。
「山波、何やってるの?
そんなことして山崎君が喜ぶと思ってる?」
頭上から降り注いだその言葉は、
私が知る敬里のものじゃなくて、あの日敬里と一緒に消えた沖田さんの言葉のように感じた。
「皆、天気が荒れ始めた。
全員、船室へと戻れ」
土方さんが隊士たちを促すことが聞こえると、
私は敬里に支えられる形で、船室へと連れられた。
「花桜、ったく何やってんだよ。
アイツと一緒に海に落ちる気だったのかよ。
あっちの家族を放り出して……」
船室の一角、敬里が過ごすその場所で小さく告げられる言葉。
「敬里にはわかんないよっ。
アンタみたいに、こっちに来てすぐに居場所があって必要とされたアンタには、
私たちの苦労なんてわかんないよ。
丞は……最初に私を助けてくれて、私に居場所を作ってくれて、
その後も、ずっと私を支えてくれたの。
この簪も丞がお土産にくれたもの」
そう言って髪から抜き取ると、両手で握りしめる。
この簪で後を追いかけたら、
私は貴方のいる場所へと行けるの?
ううん、だけど……そんなの望むあの人じゃないのは、
私が一番知ってる。
「聞いてやるよ。
吐き出せよ。
お前の弱音。
今だけは、沖田総司じゃなくて、山波敬里として受け止めてやるよ。
敬里は私の隣に腰を下ろすと、
そう言ってまっすぐに向き直った。