約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「花桜……」
「ごめん。お待たせ、舞。
さて、私たちの戦場に行こう。
ちゃんと一歩を歩き出すから」
「うん」
髪にさした、螺鈿細工にそっと触れると深呼吸をして、
隊士たちが待つもう一つの部屋へと歩き出した。
「おぉ山波、加減はいいのか?」
その部屋を出た途端に、声をかけてきたのは土方さん。
「ご迷惑おかけしました。
また宜しくお願いします」
「あぁ」
短い、そんな一言だったけど……その一言の中に、土方さんの沢山の感情が詰め込まれているのは多分、
今回も同じなんだと思う。
どんなに悲しくても、朝はやってくる。
光を連れて……。
「遅くなりました。
傷口、消毒して包帯かえますね」
私の役割が与えられている船室へと足を踏み込んだ途端、
私は今、為すべき仕事と向き合って、今出来ることをこなしていく。
こうやって、消毒や包帯を巻くのが出来るようになったのも、
丞が教えてくれたから。
丞が生きてきた証は、
私の中にも息づいてるから……。
だから私が……向こうに帰れても、
帰れなくても、この世界で命を落としたとしても、
最期の最期には……舞の大切な人が約束してくれたみたいに、
私を迎えに来て抱きしめてくれますか?
そんな日を掴み取るために、
今は……前を向いて、丞が見ることが出来なかった先の未来もしっかりと見つめたい。
そんな風に思えた。