約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)
「山波君……」
少し驚いたように顔を見つめかえす永倉さんに、
戸惑ったように頭を掻きながら、目をさまよわす原田さん。
「偉そうなこと言ってすいません。
多分、永倉さんも原田さんも、意味なく別の道を行こうとするはずないと思うんです。
だけど私は、山南さんと約束しました。
山南さんの分まで、新選組のことを見届けるって。
だから私はお二人に聞かずにはいられません。
私が知らない時間に、何があったのですか?」
「話そう。
だから今は山波君、その刀をおさめてくれないか」
永倉さんの言葉に花桜はゆっくりと二人に向けていた刀を、
鞘の中へと戻した。
「ねぇ、立ち話するものじゃないでしょ。
そうでしょ、斎藤さん。
私たちも花桜と一緒に話を聞きたい」
私の言葉で一行は話し合いが出来るよう近くの寺の一室を借りて、
円を囲むように座った。
「さて、何処から話すか……。
斎藤君が近藤の指示に従って別行動をした後も、
我らは近藤さんと共に行動していた。
ちょうど吉野宿まで戻った頃だろうか。
俺と左之に残された隊士たちを一任すると行って、
近藤さんは一足先に江戸へと早馬で戻った」
「あぁ、近藤さんは土方さんと合流したくてな。
後は今後の指示を仰ぐって言ってた。
オレも新八も、あの瞬間、近藤さんに大切にしている新選組を託された。
そう思ったら、嬉しくてな」
「その後は、そこにいる隊士たちも何度も何度も話し合ったさ。
新選組として……、今の俺たちが為すべきことは何か……。
答えは一つしかなかった。
俺たちを官軍にした新政府軍を一泡吹かせたい。
だが今のままではダメだ。
訓練も何もしていない、一般の農兵たちをどれだけ集めても、
先の戦の通りだ。
あの戦いで命を落としたものも、犬死でしかない。
そんな戦いを幾ら続けても、未来はないだろう」
そう言って永倉さんは話しを続けながら、胸元で握りこぶしを作る。
その姿から悔しさが伝わってくるようだった。